外出前
自分が目を覚ますと、家の中でただ1人だということが分かった。
時計に目を向けると午前11時であり、冷房と扇風機の音、誰かが草を刈っている音、セミの鳴く音とが、ゆったりとしている頭に響いた。
自分は、ひっくり返ったカエルのように布団を飛ばし、パワフルに起きた。
気分がいい気がした。
「なんたって10時間は寝てるからね」
「今日は、アルバイトは休みだからね」
「けど、時給で給料は少なくなるよ」
「しょんぼり」
急にお金のことを思い出すもんだから肩を落とした。
部屋を出て階段を降りた。
気分が青く、海中に沈んで行くように歩く。
お金がいつまでたっても足らないもんだから、廊下をいつまでたってもトコトコ歩く。
「誰かいるのか!」
何やら物音がするのでそう言った。
すると、お座敷のふすまから飼い猫が首を出して自分に近づいてきた。
「ご飯をくれ!」
と言ってきたので
「待ってくれ! その前に顔を洗わないといけない!」
「待てないんだ! くれ!」
そう言われるもんだから、ざっとご飯を容器に入れた。
パクパクと食べている。
顔をゴシゴシと洗い、歯をガシガシと磨いた。
目が悪いのでコンタクトをつけて、いつもの薬を飲む。
出かけたいので服を着替えた。
いつもと同じ服で玄関を出た。