二羽とり

たばこを吸おうと軒下でぼんやりとしていたときだった。

何やら、こつこつと音がするので周囲を見渡してみると庭木の所に、にわとりがいた。

二羽。

カラスとは違い、野生ではあるマイナで、どこから来たのだろうと思った。

二羽はつかず離れずで、ちょこちょこと動き回っており、ひたすら口に運んでいた。

くわくわとかすかに鳴いており可愛かった。

何を食べているのだろうと、目を細めてみても自分の目には、何も見えなかった。

たばこを吸い終わったので、家の中に入ろうとした。

にわとりは、いまだ、こつこつとつついて何かを食べていた。

後日の散歩中、丁度お隣の主人と遭遇したので、にわとりのことについての会話をした。

どうやら、お隣のにわとりらしく最近、ケージの中だけだとかわいそうだからと言って、放しているらしい。

名前はつけているのかと問うと何やら、不思議そうな顔をして「つけていない」と言った。

なので、自分の中でつけてあげようと思った。

名前を「ヤナセ」と「トナリ」にした。

ヤナセ 今日もあの家に行ってやるわよ。

トナリ だわよ、だわよ。

ヤナセ 不法侵入だ!

トナリ だわよ、だわよ。

ヤナセ 今日も、この辺りで頂くわよ。

トナリ だわよ、だわよ。

ヤナセ わたしたちは、土を食べるわよ、ここの土の方が美味しいわよ。

トナリ なんでも食べるわよ、砂利も食べるわよ。

ヤナセ ムッ、あそこにみすぼらしい人がいるわよ。

トナリ ここに住んでいる人よ。

ヤナセ 何か見ているわよ。

トナリ いやらしい顔で見てるわよ。

ヤナセ 何やら近づいてきてるわよ!

トナリ だわよ、だわよ。

ヤナセ 逃げるわよ!

トナリ だわよ、だわよ。

と、にわとりを手に持ってみようと思ったが、遠慮がちになり、捕まえられなかった。

近くでじっくりと見た。

つぶらかな瞳に、まんまるとした体つきに可愛さを覚えた。

鳥の足は、木の枝を思わせるように細く、細部は小さい模様がびっしりと埋め込まれているようでグロテスクな印象であった。

その間にも、こーこーと鳴いていて、愛らしかった。

にわとりは、愛らしい。

普段は、美味しいと食しており、感謝すべき生き物だが、こうしてせっせと動いているにわとりを見ると、犬や猫となんら変わりないなと思った。

そう思った。

生き物というものは、身近に感じるだけでなんとなく良いものだと思うものだ。

そうして、晩御飯の照り焼きチキンを食べた。

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